IEICE knowledge Discovery (I-Scover) は、電子情報通信学会の論文誌や研究会などの
論文を横断的に検索可能なサイトです。どなたでもご利用頂けます。
ここでは、I-Scoverの特徴や使い方などの他、最近のトピックスについてご紹介致します。

総合大会企画セッションの報告

2016年3月15日、電子情報通信学会総合大会(開催地:九州大学伊都キャンパス)において、I-Scoverプロジェクト企画「若手技術者のための研究の進め方」(座長:千村保文(OKI))が開催された。2件の講演と3人のパネリストによるパネルディスカッションが行われたが、約50名の方が聴講して非常に盛況であった。
研究者・技術者の方々が、実際に研究をどのように始め、どのように進め、どのように論文を執筆していくかについては、特に日頃それに悩んでおられる若手の方にとっては非常に関心のある事項である。そこで、本セッションでは、研究の発想から始めて、研究テーマや研究に必要な文献の効率的な見つけ方、研究の進め方、さらには読まれるための論文の書き方について情報共有を図るべく、大学、研究機関、企業等において、研究開発の第一線で活躍されている研究者・技術者の方々にその経験談を話して戴く機会を設けた。

写真1.井上友二 I-Scoverプロジェクトリーダの講演風景
前半のセッションでは、2件の講演を行った。まず、「I-Scoverはイノベーションテーマ発掘の宝箱」というテーマで、トヨタIT開発センターの井上友二会長が講演を行った。井上会長は、電子情報通信学会文献検索システムであるI-Scoverの開発と普及を推進しているプロジェクトのリーダを務めている。本講演では、IEEE Xplore等の他検索システムと比較してI-Scoverの優れた点(メタデータを活用したアプリを開発するためのOpenSearch APIとSPARQL APIの両方を提供)を説明した上で、文献DBをテーマ発掘の宝箱とするために、I-Scoverを活用しようと呼びかけた。

写真2.宇野毅明教授の講演風景
次に、国立情報学研究所の宇野毅明教授が「作るための発想」というテーマで講演した。研究においては発想が重要である。「知識を増やす」ことはそのための一要素であるがコストがかかり、一方、「ひねる」「視点を変える」「逆転」等の方法で新たな発想を得ることがある。いずれの場合も、「面白み」を得て新しいアイディアに基づく課題の創出が必要である。ある専門用語について概念を知るには検索システムを使用すればよいが、本当に自分の目的に適うものを知るには「よく知っている人に聞く」のがベストであり、そのためには、人とのコミュニケーション、人脈の形成が必要で、研究会が大事である、と主張した。

写真3.五味弘様の講演風景
後半では、千村座長がモデレータとなって3人のパネリストによるパネルディスカッションが行われた。まず、3人のパネリストがそれぞれの発表を行った。最初に、OKIの五味弘様が「論文執筆のための44個のコツ ~検索され読まれ引用される論文を執筆するための虎の巻~」というテーマで講演した。論文を執筆するのは大きなコストをかけ、かつ多大な労苦を伴うものであるが、執筆しただけでは意味がなく、読まれて初めて意味があるものである。そのような認識に基づき、検索エンジンにかかりやすくなるタイトルやキーワードの付け方等、論文を作成する上での44のコツについて説明した。

写真4.槇俊孝様の講演風景
次に、福岡工業大学の大学院生である槇俊孝様が「I-Scoverを用いた時系列・技術要因分析システムの活用法」というテーマで発表を行った。I-Scoverの論文メタデータを用いて、表記揺れ(同義語や類義語が複数個存在すること)を補償しながら技術動向と技術要因を分析するシステムについて説明した。また、新たなマルチプルラベル伝搬アルゴリズムにより、行列の固有値を計算する従来手法よりもLinked Dataのリンク性能を大幅に向上できる評価実験を実施したことを報告した。

写真5.岩村相哲様の講演風景
最後に、NTTの岩村相哲様が「企業における研究活動の推進~学会貢献と企業活動の両立を目指して~」というテーマで講演した。一般に、研究は3つのフェーズ、つまり、A(理論、モデル、概念に関する研究)、B(実装具現化に関する研究)、およびC(実適用に関する研究)からなる。A⇒B⇒Cのように移行し、Cからまた新たなAに移行していくモデルとすることにより、研究の目的や課題が明確になるという利点を有する。これを実際に研究した、グラフデータ分析処理技術(Grapon)におけるクラスタ分析技術をとりあげて具体的な評価を行った。

写真6.千村保文座長の講演風景
引続いてパネルディスカッションとなり、千村座長が、若手技術者の研究指導で気をつけていることは何か、研究のテーマやキーワードほどのように見つけるか、あるいは見つけさせるか、研究の視点と社会・企業への貢献の両立をどう図るか、のような質問を出して、パネリストの意見を求めた。それに対して、研究の進め方や論文の書き方について若い人を指導しても、指導される若い研究者がどの程度の心構えを持って研究に臨むかが重要であるとの意見が出た。また、研究者の所属機関(大学・独立行政法人・企業)によって視点が長期的なものから短期的なものまで変わるものであるとの回答があった。また会場からも、そもそも一つの論文で研究と社会・企業の両者に貢献すること自体が無理ではないか等の意見が出た。最後には、今後のI-Scoverの開発について質問が出て、I-Scoverへの期待の大きさを再認識した。